2018年03月12日
「終極エンゲージ」 ジョージ・ライアーの影響力がすごい
ジャンプ+(プラス)で連載中の「終極エンゲージ」4巻が発売しました(リンク先は公式サイトです)。
表紙のミムラを初めて見た時に「可愛い」と言ってしまいましたが、本編を踏まえると何とも悲しい表紙です。ミムラ……。
さて、この作品は、プロトタイプである読み切りの「ハトシェプスト」から好きで――
と、「ハトシェプスト」は、ご存知でしょうか。
「終極エンゲージ」で検索してこの更新に辿り着く方が多いと思うので、ファンの方が9割以上という前提であらすじなどは無しで話を進めていきますが、「ハトシェプスト」は読んだことない人が多いかもしれないので、ざっくり説明するとクリスが普通にいい人で、カルキと愛し合っているという設定で、女王決定戦に優勝するために強くなる旅の途中が描かれています。
宣伝:電子版なら定価で購入できるので、気になる方はどうぞ……!
(コミックス最終巻に収録されてほしいですが)
「ハトシェプスト」の幸せ満載感が大好きなので、連載が始まってからずっと「早く読み切りの展開みたいにクリスとカルキが相思相愛になってほしい」と思って読んでいました。
しかし、連載版のクリスは全くの別人でした。
読んでも読んでも好感度が1話の低いところから上がらず――
カルキが読者の気持ちを完全に代弁してくれるシーンもありました(なんと3巻)。
しかし、3巻ラストから登場した敵キャラのジョージ・ライアーの正体が4巻中盤で判明してからの怒涛の展開で、自分が期待するところとは全く別のツボを押されて、「終極エンゲージ」そのものに完全にハマりました。
ジョージは作中で一番悪い奴として出てきたんですが、そもそも生きていること自体がありえないという、存在自体が謎を多く秘めたキャラクターでもあります。
そして、彼の登場と共に明かされた様々な事実によって「クリスが地球王になった1年以内に宇宙が消滅する」という、これまでの物語を動かしていた前提が崩されます。
この事実判明以前と以降で、読み返すと序盤の見方が変わってくる構造になっているのが物凄くて、今現在連載されている漫画の中で一番多く読み返すようになりました。
キャラクターの細かい表情なども含めて、再読時の新発見が多いです。
細かい点で好きなのは、ジャナ星で種族間の寿命が話題に挙がった時のクリスの表情です。
クリスは自分が20年後に死ぬことがわかっている……
クリスの好感度が上がらない、と最初の方で言いましたが、読み返すと全然そんなことないです。再読を前提に複雑な設定を背負わされた主人公……好き。
クリスの好感度が上がらない、と最初の方で言いましたが、読み返すと全然そんなことないです。再読を前提に複雑な設定を背負わされた主人公……好き。
ジョージの登場によって得られた大きい気付きは、第1話からありました。
第1話ではルス王の王子時代と想い人キーアとの出会いと別れ、そしてディアナの強さが描かれており、どうしてもVSディアナでキーアの首が刎ねられる描写のインパクトの強さに目が行ってしまいがちです。
しかし、改めて読むと次の地球王が望まない形で女王決定戦が行われているという導入から始まっているのがわかります。
4巻だけ読むとジョージは本当に悪いやつでクリスの怒りは当然理解できるんですが、1話のルス王と同じでは?と考えると見方が変わってきます。
ジョージが抱く宇宙を滅ぼすほどの憎悪とは……?
殺害が禁止されていた初代女王決定戦のルールを踏まえると、参加者の命が奪われることは無かったわけで、生死の運命を握られたという視点では「宇宙の卵」の加護で死ねなかったジョージが本当の意味で最初の被害者だと思います。
グリムヴィアスによって「ジョージが女王決定戦のルールを殺害・武器ありに変えた」ことが判明しました。これは、ジョージは20歳で自分が死ぬことが生まれた瞬間に決まっていたのに、女王決定戦では命が喪われないことに対する怒りなのかなと考えてしまいました。
他にも、初代のラジャス王は本当にいい人だったのか?とか、女王決定戦をやることにしたのは本人の意思なの?とか、
ルス王がキーアの死に際して抱いた憎悪はクリスが生まれたことで消えたのかな…?と思ってしまい、そうなるとジョージとルス王は裏で繋がってない?と考えたりもしました(キーアの死に方とグリムヴィアスの死に方が同じ)。
現時点ではどう見てもラスボスは一番の悪人であるジョージなんですが、全ての発端である宇宙の卵がラスボスなんじゃない?とか、そもそも宇宙の卵って何よ?とか無限に考えられてしまうんです。
とにかく、ジョージ・ライアーが現れたことで既存のキャラクターや物語の世界観が一気に深まったのは間違いありません。
また、ジョージの登場によってクリスとカルキの旅にひと段落がついたことで、2人と仲間たちの旅が描かれていた物語も少し広がったように思います。
5巻の内容になりますがポポロの集大成となる主役回があったり、ファリアVSトリウィアが1話を思い返させる内容になっていたりと、もはやクリスとカルキだけの物語ではなく、宇宙に生きる者たちの群像劇になってきているのが、これまた好きな要素の一つです。
語り出したらキリがないのでそろそろ終わりますが、最近一番気になっているのはミムラとピーヴリーの関係性です。
ジョージじゃなくてミムラの命令で動いてる
展開が早すぎるので全6巻で終わってしまうのでは…?という不安がありますが、今後もクリス、カルキ、ミムラ、そしてジョージの行く末を見守りながら応援していきます。
ものすごく頭の悪い記事タイトルになってしまいましたが、自分にとってもジョージによって作品への思い入れが大きく変わったので全てひっくるめて「影響力がすごい」ということでまとめさせてください。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
ミムラは地球人ではないっぽい(1巻カバーしたのキャラ紹介でも「出身の星」としか書いてない)ので、兄妹(姉弟)だったり、実はミムラの本体だったりするのかなと思ったり……。
「宇宙の卵」の加護を破っているのが謎であり、彼女が特別な存在であるのは間違いないので正体判明が楽しみです。
次に戦うのが"ミムラの研究で増えた"竜種だというのがフラグ全開ですが、ジョージのせいで戦わない可能性もあり、どうなるのか待ちきれません。
展開が早すぎるので全6巻で終わってしまうのでは…?という不安がありますが、今後もクリス、カルキ、ミムラ、そしてジョージの行く末を見守りながら応援していきます。
ものすごく頭の悪い記事タイトルになってしまいましたが、自分にとってもジョージによって作品への思い入れが大きく変わったので全てひっくるめて「影響力がすごい」ということでまとめさせてください。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
2018年03月11日
「鬼滅の刃」禰豆子について考えてみる
「鬼滅の刃」10巻が発売しました。
10巻には遊郭編の中盤戦まで収録されています。
正直なことを言うと、この遊郭編の戦闘が長すぎて脱落しかけたのですが、その先が面白すぎたので引き続きコミックスを購入しています。
というのも、この作品は謎が多く、戦闘よりもストーリーが進む回が好きだからです。
まだ10巻なので、物語の核心に迫っていくのはまだ先かもしれませんが、気になる要素が多いのと、情報の小出しが上手すぎて、ストーリーが進むたびに考えずにはいられません。
日の呼吸(ヒノカミ神楽)や他の呼吸≒鬼殺隊の歴史や、鬼舞辻無惨についても考えることが多くて気になりますが、今回は禰豆子について考えてみました。
〇鬼としての禰豆子
基本情報の確認です。
町で評判の美人(炭治郎 談)だったが鬼へ……
・竈門家が鬼舞辻に襲われた際、鬼になってしまった
・人の血肉を必要としない〔普通の鬼と真逆の要素〕
・眠ることで回復をしている(鱗滝の推測)
・鬼化して鱗滝に出会って後、2年間眠っていた
・鱗滝から”人を傷つける鬼を許すな”と暗示をかけられている
・身体が子供になったり大人になったりする
・鬼舞辻の"呪い"を自力で外している(後述)
もう一つ、人語を話すことができないのも特徴でしょうか。
この点については、鬼舞辻が鬼に変えた男性(13話、14話)も同様だったので、人間を喰うことで強くなるのと同様、知性も高まっていくのかもしれません。
鬼が敵である作品でありながら、人を守る鬼としてもう一人の主人公のような立ち位置にいるのが禰豆子です。
〇禰豆子の強さ
戦闘シーンを見返してみました
・最初に遭遇した鬼(最低3人を喰らっている)の首から上を蹴り飛ばして切断
・「冷静になれ俺よ」の異能の鬼(女性をたくさん喰らっている)から見て強い
・朱紗丸(鞠の鬼)の攻撃で足がもげる → 戦闘中に同じ攻撃を「蹴り返す」ように
・累(下弦の伍)との戦闘で鬼血術"爆血"に目覚める
・珠世から見て「回復が遅い」 → 再生速度がすごい:10巻時点では上弦に匹敵
片手で数えられるほどしか戦っていないのに強くなりすぎです。
主人公の炭治郎が修行しているシーンがやたら多いのと対照的で、眠っている時間の分だけ強くなっているとしか思えないのですが……。
(死者から語りかけられるシーンが多いので無いとも言い切れない)
堕姫との戦いでは、怒りによって今までで一番鬼らしい姿に変貌してしまいます。
外見の年齢が今までで一番高いことも考えるポイントになりそうですが、ここで気になるのは身体に浮かび上がった葉の紋様です。
作中で出てきた単語から植物を連想すると
・葵枝(母親)の名前に含まれる葵
・鬼舞辻が探している青い彼岸花
・鬼殺隊が結界などに用いている藤の花
このあたりが候補かなと思って画像検索をしたところ、藤の花が一番近いかなと思ったのですが……
吾峠先生の描く藤の花と葉とは違うような気が……。
もうちょっと考えたいんですが、紋様については保留にして次の話をします。
〇鬼舞辻と禰豆子
鬼舞辻によって生み出された鬼は、逃れられない"呪い"にかかっています。
箇条書きすると
・体内に残留する鬼舞辻の細胞に肉体を破壊される
・鬼舞辻の名前を呼ぶと殺される
・場所を把握される
・姿が見える距離なら全ての思考を読まれる
判明しているのは以上です。
ただ、何らかの手段で外せる=解除できることが"呪い"の大きな特徴です。
珠世は「私の体を随分弄っていますから鬼舞辻の呪いも外しています」と言っています。
また、作者のモノローグによって、禰豆子も自力で"呪い"外していることが判明しています(6巻52話)。
鬼舞辻が禰豆子に言及したのは今のところ、堕姫(上弦の陸)と会話をした時のみです。
「私の支配から逃れた鬼がいる」と(10巻83話)。
あと、重要なポイントとして13話(2巻)で炭治郎に捕捉された際に、鬼舞辻は他ならぬ自身が禰豆子とニアミスしています。
しかし、炭治郎が鬼舞辻の匂いを感知できるくらいの距離なのに、鬼舞辻は禰豆子に気づいていません。また、この時点で炭治郎を殺すよう命じたものの禰豆子には全く言及していません。
禰豆子が寝ている2年間の間に"呪い"を外したということなんでしょうか。
〇炭治郎・禰豆子の母親は鬼?
10巻で疑惑の回想シーンが登場しました。
幼い禰豆子が母親(葵枝)にこう問います。
「お兄ちゃんのお目々が赤いのは おなかの中にいた時に おかあさんが赤い木の実を食べたから?」
あやしい……!
先ほど、禰豆子に浮かんだ葉の紋様について途中で話を切ったのはこのためです。
個人的な予想としては、禰豆子に浮かんだ葉の紋様は「赤い実の葉」なのでは?ということでした。
植物に詳しい人は、この実では?という予想まで出来そうで、知識不足が悔しいです。
ちなみに、軽く調べたところ「鬼縛り」という名前の植物が赤い実を付けるそうですが関係あるのでしょうか。
葵枝が鬼なのか?と疑ってしまうシーンは、読み返したところ、もう1か所ありました。
12話(2巻)で「冷静になれ俺よ」の鬼が「分けられた血の量が多い」と推測していました。
一方、14話(2巻)で鬼舞辻が人間の女性に血を分け与えた際、鬼にはならずに死んでしまいました。
その時、鬼舞辻は「私の血を大量に与え続けるとどうなると思う?人間の身体は変貌の速度に耐えきれず細胞が壊れる」と言いました。
そもそも、鬼舞辻の血を分け与えられるには、彼自身に認められないといけないはずです。
鬼になりたての禰豆子が、何の理由もなく鬼舞辻に大量の血を分けられたとは考えられません。
禰豆子を鬼にしたのは誰なのか……?と考えてしまいます。
あと、細かい点として葵枝が亡くなっている所だけ着物がいつも違うのも何だか気になってしまいました。寝間着?
〇竈門家を襲った鬼は本当に鬼舞辻なのか?
まとめです。
色々書いてきましたが、自分が一番気になっているのは1話の真相です。
鬼舞辻が竈門家を襲ったならそう描けばいいのに、まだ確定情報が出ないのがどうも気になります。
11話(2巻)で鱗滝が炭治郎に語ったのは「人間を鬼に変えられる血を持つ鬼はこの世にただ一体のみ」ということであり、鬼舞辻無惨が竈門家を襲った鬼だと断言しました。
……が、物語が進むにつれて状況が徐々に変わってきたように思います。
というか、読み返していて思ったのですが鱗滝さんの情報が古いというか、意図的に誤って伝えているのではと疑いたくなってしまいました。
話を戻します。
鬼の増やし方は鬼舞辻が生み出す以外に、作中で確定した描写が1つ、疑わしい描写が1つあります。
【確定】珠世の研究によって鬼となった愈史郎
【疑惑】上弦は自分の血によって鬼を増やせる?
→ 63話、64話(8巻)の猗窩座の発言と、11巻以降でも別の登場人物による言及あり
組織のトップとしては最低ですが、ボスとしてはかなり魅力がある鬼舞辻無惨が、竈門家襲撃に関わっているとしたら不手際が多すぎると思うんですよね。
誰か別の鬼が犯人なのでは、と思わずにはいられないのでした。
最後に。
82話(10巻)での1話の回想、禰豆子の視点だったら嫌ですね……。
(1話で炭治郎が「口や手に血はついていなかった」とは言っていますが。
長く書いたわりに全然まとまらなかったんですが、20巻くらいまで出た時に自分で読み返して何か思うところがあったらいいかなと。
最後まで読んでくださった方はありがとうございます。
2017年12月05日
「怪物事変」1巻を読みました
田舎の静かな村で、家畜が次々と変死するという奇妙な事件が起きておりました。
事件解決の為に東京から呼ばれた「隠神」という派手な格好の男。
調査の途中で男は、村に住む「泥田坊」と呼ばれる不思議な雰囲気の少年と出会うのでございます。
数奇なる怪物物語、これより始まり始まり――。
(コミックス1巻裏表紙より)
ジャンプSQで連載中の「怪物事変」1巻を今さら読みました。
藍本松先生の「保健室の死神」が好きなので、1巻をすぐ買っていたのですが読むタイミングを逃して、やっと読めたので感想を吐き出してみます。
ちなみに、今になって読んだ理由は
怪物事変、年賀状企画やります~!🎍☀️最新話の感想を、ファンレターで送ってくれた人全員に年賀状返信いたします。
— 藍本 松 (@aimoto1222) 2017年12月4日
対象は、発売2週間後消印(2017年12月18日)まで。画像は作業中のものです。
👇宛先はこちらまで!👇
101-0051
神田神保町3-13ジャンプスクエア編集部「怪物事変ファンレター」宛 pic.twitter.com/Z7ZKvls3mq
これです。
漫画家さんからもらったことのある年賀状は、サイン会でファンレターを渡した西森博之先生だけなんですが、貰えると思っておらずとても嬉しかったので、こうして確実に貰える企画があるなら送らざるを得ません。
という不純な動機でやっと1巻を読みましたが、もっと早く読んでおくべきでした。
やはり面白いです。
〇ストーリー
面白いです、とは言ったものの、1巻の時点では今後がどうなるかわかりません。個人的な印象としては、まだプロローグも終わっていないのではないか…?と思うほどです。
月刊誌ゆえのスロースタートなのか、全容が見えてきません。
怪物同士の戦いになっていくのか、夏羽の両親を巡る旅になっていくのか、もしくは両方が混ざり合って進んでいくのか…?という大雑把な予想しかできません。
物語的な面白さがどうか?というのは2巻以降でわかるのでしょう。
〇主人公・夏羽
ストーリーがどうなるかまだわからないのに読み続けたいと思うのは、この少年が主人公だからです。
藍本先生の表情を描く力がすごい、と思わされる主人公です。
産みの親から捨てられたと思い込み、育ての親や年の近い他の子どもから邪険に扱われ、感情を捨てて生きてきた少年と書いてしまうとありきたりですが、藍本先生の画力によって目だけで感情が読み取れるので、なんかもう愛おしいです。幸せになってほしい。
夏羽が本当に笑った時に泣く自信しかないです。
〇隠神
いい人だから死にそう……。2巻の表紙なのもかえって不穏です。
〇シキ
100%いい奴だというのが言動から隠しきれていないのがもう好きです。
明るいだけでなく、なにかを抱えているのが数コマの描写で伝わるのも好きです。
〇アキラ
かわいい。
夏羽を紹介された時に「シキと一緒だね」と言っているので、彼は純粋な怪物なのかな…?と予想できますが、見た目とのギャップが大きいのか、もしくはより美しくなるのか正体判明に期待が膨らみます。
1巻ではまだ細部がわからないものの、男3人組というのは「保健室の死神」のアシタバたちを思い出すので、間違いない組み合わせですね。
〇一番好きなシーン
普段は無表情な夏羽が、自分の死を目前にして作り笑いをして嘘をつく1話ラスト付近の一場面です。
目の光が消えて、この後も1回も上がらない口角を無理矢理挙げるカットがすごいし辛い。
嬉しそうにしている他のシーンと比べると本当に辛すぎる……。
でも、この描写だけで藍本先生の演出力の高さが一発でわかるすごいシーンです。
〇その他気になったところ
・1話の冒頭で鹿の子村は「鹿を敬う」と説明がされていて、1話の真犯人は鹿の屍鬼。これ女将さんは知ってたんじゃないですか…?と想像させる余地があるのがすごい。作りこみが細かいです。
・コンソメパンチ味のおにぎりってあるんですか!?
この感想を書いてる途中で2巻、3巻を買ってきたので、これを書いたら2巻を読みます。
2巻の感想も書きたいです。