2014年11月
2014年11月30日
「3月のライオン」 彼の名を何と呼ぼう
※ 10巻の重大なネタバレを含みますので、これから読む予定の方はご注意ください。
「3月のライオン」10巻がすごいです。
予想の斜め上、というのはこの事か!と10巻の最後で度肝を抜かれました。
今まで色々な漫画を読んで来て、全く予想していない展開というのは何度も目にしてきましたが、
次の展開をだいたい予想してページをめくって、これほどの衝撃を受けたことはありませんでした。
そのシーンについては後で少しだけ語るので、本題にさっさと移ります。
「3月のライオン」は計算されて描かれている要素が多い作品だと思い込んで読んでいます。
その1つに、主人公・桐山零が川本家の三姉妹にどう呼ばれているかを3年前(6巻が発売された頃)に気にしていたことを今回思い出しました。
モモちゃんにとっては「れいちゃん」だし、あかりさんにとっては「桐山くん」なんだけど、ひなちゃんには決まった呼び方がない。これは、ひなちゃんは2人の真似をしながら、呼び方を探しているのではないか?というのが今の説。だから、決まった呼び方になる=零との関係性がある程度定まるのかなと
— 会社のネジ@どらくま1話感想 準備中 (@ju_or_ten) 2011, 7月 25
(全くの偶然なんですが、「関係が定まる」という10巻の展開を見据えたような言葉をチョイスしている自分にちょっと驚きました)
次女のひなた(以下、ひなちゃん)は零のことを「れいくん」「桐山君」「桐山くん」「零くん」「れいちゃん」など、実に様々な呼び方をしています。3年前の自分は、ひなちゃんの立場になって、零の呼び方を模索しているのだと考えていたようです。
新刊発売にあたって既刊を読み返してみると、ある時は姉に引っ張られて「桐山君」になり、ある時は妹に引っ張られて「れいちゃん」になるようなシーンも多かったです。
ここで、川本三姉妹と零の関係について考えてみると、ひなちゃんだけ呼び方が定まらないのも納得がいきました。
あかりは零自身が言っているように、最初に全てを見られて知られてしまっているので「お姉さんと弟」でしかないように思えます。
また、モモも(年齢的にまだよくわかっていない所もありますが)「お兄ちゃんと妹」のような関係が全く変わっていません。
ところが、ひなちゃんだけは違いました。
姉が見つけてきた3つ年上の男の子が、ただの高校生だと思っていたら実はプロの棋士で、自分のいじめ問題に真摯に向き合ってくれて、受験勉強の先生になってくれて……と、姉と妹に比べたら零との関係は目まぐるしいものがあります。
そして、10巻のコレです。
前述した関係の変化だと「婚約者」にジャンプアップしました。
となると、今後の呼び方が気になるというものです。
それにしても、ここまでかなり丁寧に「恋にはならない」という前フリがあったので完全に予想の斜め上でした。
父親の来訪は表紙裏のあらすじで予想が出来てしまって悲しかったんですが、父親の性格が予想の斜め下だったので、零のここでの発言がV字回復すぎて何だかよくわからない感情が湧いて、めくった瞬間にお腹がヒュってなりました。
最後になります。
関連して、というか今回この事について書こうと思ったのは、10巻のこのシーンと関連付けて気になったシーンがあったからです。
7巻のモノローグでひなちゃんが零を一度だけ特殊な呼び方を(心の中で)しています。
「あなた」と呼んでいます。
どうして零が目の前にいるのか?という疑問は6巻の最後でひなちゃん自身が口にしているのに、わざわざモノローグに置き換えて7巻でもう1回描き直されています。
ひょっとしたらこれは、未来のひなちゃんが、いわゆる日本語で言うところの「あなた」との思い出を回想している可能性もあるのでは!?と、無駄に思考を飛躍させてしまうのでした。
これからの展開がどうなるにせよ、ひなちゃんが零を呼ぶ最終的な形は「あなた」であって欲しいなと思わされる10巻でした。