終極エンゲージ

2018年03月12日

「終極エンゲージ」 ジョージ・ライアーの影響力がすごい

ジャンプ+(プラス)で連載中の「終極エンゲージ」4巻が発売しました(リンク先は公式サイトです)。
表紙のミムラを初めて見た時に「可愛い」と言ってしまいましたが、本編を踏まえると何とも悲しい表紙です。ミムラ……。

さて、この作品は、プロトタイプである読み切りの「ハトシェプスト」から好きで――
と、「ハトシェプスト」は、ご存知でしょうか。
「終極エンゲージ」で検索してこの更新に辿り着く方が多いと思うので、ファンの方が9割以上という前提であらすじなどは無しで話を進めていきますが、「ハトシェプスト」は読んだことない人が多いかもしれないので、ざっくり説明するとクリスが普通にいい人で、カルキと愛し合っているという設定で、女王決定戦に優勝するために強くなる旅の途中が描かれています。

ジャンプSQ.CROWN 2016 SPRING
ジャンプSQ.編集部
集英社
2016-04-15


宣伝:電子版なら定価で購入できるので、気になる方はどうぞ……!
(コミックス最終巻に収録されてほしいですが)


「ハトシェプスト」の幸せ満載感が大好きなので、連載が始まってからずっと「早く読み切りの展開みたいにクリスとカルキが相思相愛になってほしい」と思って読んでいました。
しかし、連載版のクリスは全くの別人でした。
読んでも読んでも好感度が1話の低いところから上がらず――

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カルキが読者の気持ちを完全に代弁してくれるシーンもありました(なんと3巻)。

しかし、3巻ラストから登場した敵キャラのジョージ・ライアーの正体が4巻中盤で判明してからの怒涛の展開で、自分が期待するところとは全く別のツボを押されて、「終極エンゲージ」そのものに完全にハマりました。

ジョージは作中で一番悪い奴として出てきたんですが、そもそも生きていること自体がありえないという、存在自体が謎を多く秘めたキャラクターでもあります。
そして、彼の登場と共に明かされた様々な事実によって「クリスが地球王になった1年以内に宇宙が消滅する」という、これまでの物語を動かしていた前提が崩されます。
この事実判明以前と以降で、読み返すと序盤の見方が変わってくる構造になっている
のが物凄くて、今現在連載されている漫画の中で一番多く読み返すようになりました。
キャラクターの細かい表情なども含めて、再読時の新発見が多いです
細かい点で好きなのは、ジャナ星で種族間の寿命が話題に挙がった時のクリスの表情です。

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クリスは自分が20年後に死ぬことがわかっている……

クリスの好感度が上がらない、と最初の方で言いましたが、読み返すと全然そんなことないです。再読を前提に複雑な設定を背負わされた主人公……好き。

ジョージの登場によって得られた大きい気付きは、第1話からありました。
第1話ではルス王の王子時代と想い人キーアとの出会いと別れ、そしてディアナの強さが描かれており、どうしてもVSディアナでキーアの首が刎ねられる描写のインパクトの強さに目が行ってしまいがちです。
しかし、改めて読むと次の地球王が望まない形で女王決定戦が行われているという導入から始まっているのがわかります。
4巻だけ読むとジョージは本当に悪いやつでクリスの怒りは当然理解できるんですが、1話のルス王と同じでは?と考えると見方が変わってきます。

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ジョージが抱く宇宙を滅ぼすほどの憎悪とは……?

殺害が禁止されていた初代女王決定戦のルールを踏まえると、参加者の命が奪われることは無かったわけで、生死の運命を握られたという視点では「宇宙の卵」の加護で死ねなかったジョージが本当の意味で最初の被害者だと思います。
グリムヴィアスによって「ジョージが女王決定戦のルールを殺害・武器ありに変えた」ことが判明しました。これは、ジョージは20歳で自分が死ぬことが生まれた瞬間に決まっていたのに、女王決定戦では命が喪われないことに対する怒りなのかなと考えてしまいました。

他にも、初代のラジャス王は本当にいい人だったのか?とか、女王決定戦をやることにしたのは本人の意思なの?とか、
ルス王がキーアの死に際して抱いた憎悪はクリスが生まれたことで消えたのかな…?と思ってしまい、そうなるとジョージとルス王は裏で繋がってない?と考えたりもしました(キーアの死に方とグリムヴィアスの死に方が同じ)。
現時点ではどう見てもラスボスは一番の悪人であるジョージなんですが、全ての発端である宇宙の卵がラスボスなんじゃない?とか、そもそも宇宙の卵って何よ?とか無限に考えられてしまうんです。
とにかく、ジョージ・ライアーが現れたことで既存のキャラクターや物語の世界観が一気に深まったのは間違いありません


また、ジョージの登場によってクリスとカルキの旅にひと段落がついたことで、2人と仲間たちの旅が描かれていた物語も少し広がったように思います。
5巻の内容になりますがポポロの集大成となる主役回があったり、ファリアVSトリウィアが1話を思い返させる内容になっていたりと、もはやクリスとカルキだけの物語ではなく、宇宙に生きる者たちの群像劇になってきているのが、これまた好きな要素の一つです。

語り出したらキリがないのでそろそろ終わりますが、最近一番気になっているのはミムラとピーヴリーの関係性です。

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ジョージじゃなくてミムラの命令で動いてる

ミムラは地球人ではないっぽい(1巻カバーしたのキャラ紹介でも「出身の星」としか書いてない)ので、兄妹(姉弟)だったり、実はミムラの本体だったりするのかなと思ったり……。
「宇宙の卵」の加護を破っているのが謎であり、彼女が特別な存在であるのは間違いないので正体判明が楽しみです。
次に戦うのが"ミムラの研究で増えた"竜種だというのがフラグ全開ですが、ジョージのせいで戦わない可能性もあり、どうなるのか待ちきれません。


展開が早すぎるので全6巻で終わってしまうのでは…?という不安がありますが、今後もクリス、カルキ、ミムラ、そしてジョージの行く末を見守りながら応援していきます。

ものすごく頭の悪い記事タイトルになってしまいましたが、自分にとってもジョージによって作品への思い入れが大きく変わったので全てひっくるめて「影響力がすごい」ということでまとめさせてください。
最後まで読んでくださってありがとうございました。




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comic_review_10 at 17:33|PermalinkComments(0)

2017年03月29日

「終極エンゲージ」3話前編 感想

「ジャンプ+」掲載です。無料で読めるのでぜひ本編を読んでから感想を読んでください。 

ディアナお母さんの心労で宇宙がヤバい。
先週の感想で、ディアナに攻撃を仕掛けたクリスを突き動かしているのは「好奇心」と予想していたので、当たって1人でニヤニヤしていました。
しかし「どちらが強いか」ではなく「宇宙の卵の加護が働くのはどちらか」を実験するための攻撃でした。こっちは読み込みが浅くて外れてしまったので残念ですが、ディアナさんの鉄面皮に隠された色々な感情が見られて貴重な経験ができました。
無表情に見えるけれど悩みの尽きないディアナと、キラキラした笑顔でとんでもない内面を見せているクリスの対比が面白いです。が、現時点だとクリスが主人公っぽくなさすぎてディアナさんの子育て苦労話の方が読みたい感じが……。
(先週書いた通り、カルキとの交流を通して人間性を獲得していくと思っているので何の心配もしていません)

クリスの願いは旅行でしたか。
ディアナには研究旅行と伝えていますが、婚前旅行ですねこれ。
「旅程を提出しろ」と言うディアナの想像力が、自分のクローンで将来の嫁のカルキを連れて旅行をするつもりのクリスの行動力に追いついていないのが面白いですね。
この話の中で神童とも言うべきクリスに並び立てる者がいない、という回想を描いているのも巧いです。
大事なのは「どういう旅行なのか」ではなく「誰と旅行するのか」なんですよディアナお母さん…!

今まで登場している3人での旅行になるのか、 原作・江藤先生が爆推しの宇宙王・ルスお父さんも同行するのか(ない)、新キャラが数人増えるのか、など考えてしまいますし、ついにカルキが誕生する!というところで来週への引きもワクワクもんです。
ミムラの仕込みか何かで出発前にクリスVSカルキになると見ていますが果たして…!? 

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comic_review_10 at 21:16|PermalinkComments(0)

2017年03月19日

「終極エンゲージ」2話 感想

「ジャンプ+」掲載です。無料で読めるのでぜひ本編を読んでから感想を読んでください。 

冒頭、クリスとカルキの手合わせから始まります。
そういえば読み切り版「ハトシェプスト」ではクリスの強さは描かれていなかったので嬉しいシーンです。宇宙最強の地球王・ルスと、妻になるためにトーナメントを勝ち上がったディアナの間に生まれたクリスが現在一番強いはずですもんね。
しかし、読み切りではあんなに表情豊かだったカルキが無表情なのはけっこう悲しいです。早く笑顔が見たい……。
でも外界を知らないからこの描写も当然というものです。

クリスの友人で学者のミムラが出てくることで、彼らの過去-クリスがカルキを生み出そうとしたわけ-が少し明らかになります。
「自分の遺伝子こそが宇宙最強である」と信じた10歳のクリスが、自分の仮説を証明するためにクローン(カルキ)を生み出した、と。なるほど。
(描写には納得したけど、この10歳あたまおかしいという顔)
ただ、1話の最後を読むと、母親に怯える父親(現地球王)を見て、その関係性に嫌気がさしているようだったので、クリスの目的は物語が進むにつれて、仮説の証明から愛する者と結ばれることに変わっていくのでしょう。

無表情なカルキが人間性を獲得していくのと、自分の好奇心を満たすためにカルキを優勝させるクリスが愛を知って、互いに相思相愛になる物語、というラインが2話の時点で見えていていいですね…!

さて、友人のミムラは何やら怪しい表情をしています。
クリスのことが好きでカルキを目覚めないようにしてやろうとか、自分にデータをフィードバックして性転換してトーナメントに出場してやろうとか考えているんでしょうか(無い)。
的外れな予想は置いておくとしても、カルキの目覚めにあわせて何らかのイベントが起きそうなので、ミムラの動向には今後も注目したいです。

今週ラストはクリスと母親・ディアナの対面です。
この親子、クリスの好奇心のせいで6年前に一度戦っているようです。
「戦っている」と表現したのは、殺しにかかっているようには見えないからです。6年前にクリスがディアナと戦って現在の王妃より自分が強いことがわかった、あるいは(「宇宙の卵」の加護が無ければ)弱いことがわかったので、カルキを生み出すことを思いついたのかな、と考えましたが果たして…?
普通に考えると、ディアナがクリスを恐れている(?)ことから、クリスの方が強いのでしょうか。

1話の感想をいくつか見ましたが、 ディアナの人気がけっこう高くて驚きました。が、たしかにこの人がルスやクリスをちゃんと愛していたら良いなとか思ってしまいましたし、作画の三輪先生のイラストも素敵でした。
複雑な親子関係が見え隠れしていますが、良い家族であってほしいです。


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comic_review_10 at 22:08|PermalinkComments(0)

2017年03月12日

「終極エンゲージ」1話 感想

「ジャンプ+」掲載です。無料で読めるのでぜひ本編を読んでから感想を読んでください。 

2016年のジャンプSQクラウンに掲載された「ハトシェプスト」という読み切りが年内ナンバーワンだったので、連載化が告知されてからずっと楽しみにしていた「終極エンゲージ」がとうとう始まりました。
読み切りが連載化する場合、1話目が読み切りとどれだけ違うかが個人的にはけっこう気になるので読む前からドキドキしていたんですが……全く別物で驚きました。
そしてやはり面白いです。

主人公のカルキとクリスを差し置いて出てきた「次の地球王」ルスと、人魚のような姿の異星人・キーアが物語を進めていきます。まずここで困惑しましたが、根幹の設定は変わっていませんでした。
地球の王が宇宙で一番強いため、その妃になるために宇宙中から女性が集まってきて、戦いによって王妃の座を決めるという設定はわかりやすくスッと入ってきます。それに、人間だけでなく色々な姿形をしている宇宙人が出てくるということは、登場する女性キャラの幅が無限にあるということで色々な需要に対応できそうです。

話がいきなり逸れました。
ルスはキーアに一目惚れしてしまうわけですが、まあ16歳の少年が裸を見た女性が可愛くて性格も良い子だったら惚れてしまうのはわかりますよね!
あとやはり、江藤先生の描く「良い奴」は細かい描写で本当に良い奴だとわかるから好きです(別の読み切りをもう1本読んでいます)。今回でいえば、ルスが付き人にキレてしまった後に謝っていたりとか、キーアはひたすらいい子です。
この時点ではまさかあんなことになろうとは思わず……。今見ると明らかにフラグなんですけど、主役が出てこないので混乱していて気付きもしませんでした。

さて、バトル漫画なのでバトルも気合入っています。
短期決戦ですがお互いに見せ場があって良いですね。蛇腹剣(BLEACHの「蛇尾丸」みたいな剣)がすごい好きなのでキーアの戦法がめちゃめちゃツボにハマりました。 
が、決着は悲惨なものでした。これはジャンプ+じゃないとできませんね。
あんなことになったのに民衆も実況の人もスポーツの試合でも見るかのように興奮しているのが、王以外にとっては「娯楽」でしかないんだなと伝わってきて、当事者とそれ以外とのギャップが感じられました。この辺は後々掘り下げられるんでしょうか。

そして、「終極エンゲージ」は、ルスの物語ではなかったと判明します。
キーアを愛していながらも、その彼女の命を奪ったディアナが王妃となり、「地球王」ルスはかつての強気を失った抜け殻のようになってしまっていた、と。あまりに残酷な展開です。
ただ、こういう背景があったとわかった後に「ハトシェプスト」を読んでカルキとクリスの関係をもう1回見てみるとものすごく納得しましたね。
(読み切りでは16代の地球王になるはずのクリスが連載では14代になっていたりと、微妙に設定を変えて読み切りから予測ができないようにしてあるのがズルい上手いですね。)

先の展開に期待しかない1話ですし、本当の主人公のカルキとクリスについて読み切りで知っているので期待しかないんですが(2回言った)、1話がほとんど「主人公の親父の可哀想な過去」というのはアンケート的には大丈夫なんでしょうか。それだけが不安です。


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