ヨアケモノ

2015年07月18日

ヨアケモノ 第壱話「山犬」 感想






「ヨアケモノ」連載開始から、本日発売のジャンプで1周年!

ということで、振り返って感想を書いてみました。

○どんな作品?

連載開始から1年経ち、連載終了からも1年近く経つので少しだけ説明をします。
簡単に表すと、幕末に実在した「新撰組」をジャンプ的にアレンジした作品です。
刀で戦うだけのバトル漫画ではなく、「獣刃」とよばれる動物の力を秘めた刀が登場するのが特徴です。
新撰組だけでなく敵も「獣刃」を所有しており、動物の力をぶつけ合って戦うバトルシーンは見どころです。作者の芝田優作先生の、デビュー作とは思えない画力の高さも相まって戦闘描写はかなりのモノに仕上がっており、今読み返しても興奮します。
史実には存在しない暁月刃朗が主人公を務めているのも特徴です。「先に長州藩の誰かに会っていたら新撰組と敵対していた」と言われるほどの無知純粋さを始めとした尖った特徴を持つ、なかなかオモシロイ少年です。
あと何といっても、有名な沖田総司が弱いのがすごいです。
「ヨアケモノ」が新撰組をモチーフにした作品のなかでも異彩を放っている一因であることは間違いありません。

そんな作品です(どんなだ)。


○初回から濃い戦闘!

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第壱話の見どころは何といっても、刃朗&銀VS松永主善でしょう。
初回からこんな戦闘が見られるとは…!と興奮したのを思い出します。
腕が落ちるわ、顎が切り裂かれるわ、相棒の銀は死ぬわ…と、いきなりやってくれます。
「なるほど…拙者の脇差か」と「零点の答えだ」は、ページを跨いだ演出と合わせてシビれます。
(前者は、見慣れてくるとフキダシの「ぼとっ…」に笑ってしまいますが)

一方で、この戦闘の結果によって主人公・刃朗の行動原理が薄くなってしまったのでは?と今になって思うところがあります。

まず、作品世界の設定を刃朗と読者に語ってくれた銀がいきなり命を落とします。
このことで刃朗は道標を失い、最終回まで「難しいことはわからない」と言い続けることになりました。
読切版(リンク先感想)では、相棒の銀がいないので刃朗が自らの意思で新撰組へ入隊する決意をしています。連載版では銀の遺志を継いで新撰組へ入隊することを決意するものの、新撰組に対する理解があまりにも薄く……その後の刃朗の言動はご存じの通りです。

そして、この銀を殺した松永主善を倒したのは刃朗……ではなく土方でした。
相棒の敵討ちのため新撰組へ入隊し、復讐鬼として生きることになった刃朗は近藤、土方、沖田など本物の武士に感化されて目覚めていく……ということはありません。
仇の松永主善は刃朗が気を失っている間に死んでいます。
刃朗は1話で相棒を失うだけでなく、相棒の命を奪った仇を倒すという目標も奪われてしまうのでした。
この点については、明らかに失敗だよ…!というよりは、勿体ない設定だったなという印象です。


○いまさら考察~銀の出自は?

「ヨアケモノ」で気になる点を考えてみます。
今回は1話で退場してしまった銀です。彼は一体何者だったのでしょう?

坂本龍馬がオーバーテクノロジーなサングラスをかけていたり、色々とジャンプ的な要素はあるものの、キャラクターの髪の色は普通なのが「ヨアケモノ」の特徴です。
(近藤局長の金髪は獣刃(金獅子)が影響していると考えられます)

そんな中、銀はコミックスのキャラクター設定で「銀髪」とはっきり書かれています。
最後まで正体のわからなかった「黒船の男」が外国人である可能性を考えると、銀が只者ではなかった可能性がどうしても捨てきれません。

きたないナルミこと中村半次郎が加藤鳴海に類似したマスクをしていることから、藤田和日郎先生の影響を受けたことが少なからず考えられます。
ということは、1話の時点からとんでもない伏線を張っていた可能性があってもおかしくない。そうは思いませんか?

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この笑顔に隠された銀の真意とは…?
「名を揚げる」ことで一体何をしようとしていたのか……?
1話の扉絵を改めて見ると、土方の首に銀の刀がかかっている所も見れば見るほど怪しいです。
ひょっとすると銀が黒幕だった、という可能性もあるのでしょうか。


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○おわりに~今週の沖田さん

沖田さんは屯所に残っていたのに松永主善に反逆される(ナメられている)

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2015年02月05日

読切版「ヨアケモノ」が素晴らしい






「ヨアケモノ」最終巻が発売されてから早くも1か月が経過しました

新撰組をヤンキー仕立てに大胆アレンジした「ちるらん」や大河ドラマ「花燃ゆ」で幕末分を補給してはいたものの、もっと「ヨアケモノ」が読みたい…!という衝動は抑えきれませんでした
そんな慢性ヨアケ欠乏症に悩まされていた時、一つ閃きました

読切版の「ヨアケモノ」があったはずでは…?と

調べると、掲載誌は2013年の「ジャンプVS(バーサス)」という増刊誌とのこと
雑誌の名前がわかればこちらのものです

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カカン!

き、禁書を手に入れてしまった…!
(2ヨアケくらいの出費で状態の良いものを手に入れられました)
獣刃を手にした坂本龍馬の気持ちが少しわかりました。これは昂ります

「ヨアケモノ」の原点である47ページは一体どのようなものなのか!?
よくある連載第1話と全く同じパターンなのか!?
期待と不安が入り混じる中、読み終わってまず浮かんだ感想は
コミックスに掲載してほしかった!の一言に尽きます

2ヨアケを払って手に入れた価値は十二分にありました
連載版と大幅に設定が違ったので新撰…もとい新鮮な気持ちで楽しむことができました

○暁刃朗と朱月刃狼

連載版の主人公・暁刃朗は、相棒・銀の遺志を継いで新撰組に入隊をしました。
銀が憧れた新撰組について何も知らない刃朗が0から学んでいくという設定だったので、
「己には難しいことはわからない…」というのが口癖になっていました。
「難しいことはわからないけど、新撰組にいるから長州は敵」というスタンスで、殺戮マシーン的な一面があったなと思ってしまうのが刃朗でした。

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一方で読切版の主人公・朱月刃狼は「土方歳三を越える」という明確な目的があり、新撰組に入隊をしました。
これだけで刃狼というキャラクターに筋が通っています。
(連載版も同じ目的を持っていたような節がありましたが、1話で見下されたから見返したい的なニュアンスだったように思います)
他のシーンを見ても長州を知っていたり、沖田さんを「せんせい」と呼んだり
良識のある刃朗という感じです。

それに
獣刃が暴走して女性を殺そうとした敵を、身体を張って制止するシーンは

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最高に格好良いです。
迷言の刃朗、名言の刃狼という感じでしょうか。

そして、オチを暴いてしまうので申し訳ないのですが
なぜ土方を越えたかったか、という理由もちゃんと描かれています

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なんと、刃狼は土方の息子だったのだ!(カカン)

連載版も刃狼が主人公だったら良かったかもな…と思ってしまうくらいに47ページの中で無理なく綺麗にまとまっていて、なおかつ魅力がある子でした。

……何だか読切版「ヨアケモノ」の魅力を伝えるというより、連載版の主人公・刃朗を悪く言うばかりの内容になってしまいました。
しかし、刃朗がいてこその連載版「ヨアケモノ」なので、また近いうちに読み返すことで連載版のオモシロさも改めて確認をしたいところです。

最後になりますが

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沖田さんのドカ食いが素敵です。
外見は連載版の方がメリハリがあって好きですが、この食べっぷりは素晴らしいですね。

いつか短編集などに掲載される日を夢見つつ、それまで大事に保管をしておきます。
電子版で配信されたりしないのかな。
「ヨアケモノ」ファンにはぜひ読んで頂きたい読切版でした。


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2015年01月07日

「ヨアケモノ」にヒロインが存在した、という話



週刊少年ジャンプで連載されていた「ヨアケモノ」の与太話です。

コミックス2巻のオマケについて触れているので、購入予定の方はご注意ください。


第1話の完成度が高く、これは期待できるバトル漫画が始まったぞ!と思ったのも束の間、個性的すぎる沖田総司(沖田さん)が登場したのを引き金にあっという間に終わってしまいましたが、大好きな作品です。

そんな「ヨアケモノ」、短期打ち切りになってしまった理由の1つにヒロインがいないことが挙げられるのではないでしょうか。
特別、男臭い作画ではないにも関わらず女性のメインキャラクターがいないというのは致命的です。少年漫画なので、ヒロインがいてこそのヒーローという面もあるでしょう。

といいますか、ヒロインがいないどころか女性キャラクターがほとんどいませんでした
全16話を振り返ってみても、2話で沖田さんが助けた茶屋の娘、稔麿と一緒にいた遊女(故人)、土方さんのアネキ(名前だけ登場)、以蔵に斬られて死んだ人、池田屋にいた娘くらいしかいなかったんじゃないでしょうか。

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個人的に一番可愛いのは池田屋の子です。胸がでかい。
しかし、モブキャラを含めてこれだけしかいない、というのは驚異的です。

が、よく読むと、新撰組に女性隊士が一人いるのでは!?という疑惑が浮上します。
お面を付けた隊士・山崎烝がその人です。

疑惑の発端は、主人公・刃朗の能力を見極めるために山崎が能力を使用し、素顔が少しだけ見えた以下のシーンです。

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目の周りに羽があるように見えるから、梟の獣刃かな?という他に、まつ毛が長すぎないか?と思ったのです。
加えて、1巻のオマケにあった山崎のプロフィールで入浴中の姿が描かれているのですが、シルエットが細く曲線的で女性っぽいのです。説明文にも「風呂にも必ず一人で入る」とあり、怪しさ満点です。
しかし、疑惑は疑惑。1巻の時点では真実は見えてこないのでした。

 永遠の謎になると思われた山崎女性疑惑ですが、2巻で作者の芝田先生から解答が示されています。
カバー下の「オマケモノ」の最後に「2巻の本編のどこかに山崎の素顔が出ています!」とあるのです。
電子書籍版ではカバー下が収録されていないので、ファンの方で紙のコミックスを買っていない方は買いましょう。

2巻で山崎の面の下が描かれているコマで、1巻とは逆側の目が見られます。

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どうやら、左目のすぐ下にホクロが2つあるようで、これは素顔を探す時に大きなヒントになりそうですね。
あと、ヒントがあるとしたら、山崎は「池田屋に潜入して調査をした結果、地下通路の階段を見つけた」ということでしょうか。
あえて正解は書きませんが、ヨアケモノのファンである皆さんには松永のように零点の答えを導いてしまうことはないでしょう。


2巻のオマケを見ると、芝田先生はかなり設定を練り込んでいるように思える一方で次の作品へ情熱が向いていることが伝わってくるので、「ヨアケモノ」については知ることができない設定だらけになりそうです。
そんな中で1つでも確信が持てることが増えたのは嬉しいことです。

というわけで、「ヨアケモノ」にはヒロイン候補が密かにいたんだよ!という話でした。


しかし、これだけの美人ヒロイン(しかも変化球)がいたのに、本編では明かされなかった裏設定になってしまったのは本当に勿体ないことです。
夜中に風呂へふらっと立ち寄った刃朗が山崎と出くわしてTo Loveるになる展開が序盤にあったなら、人気が出て今でもヨアケモノがジャンプ本誌で読めたのでしょうか。

己には難しいことはわからない……




新撰組成分が不足している人には「ちるらん」をオススメします。
斉藤一が好きです。

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