ゴールデンカムイ

2015年02月22日

「ゴールデンカムイ」2巻 不死身の男、アイヌの村へ行く






「我々の戦争はまだ終わっていない」

1巻表紙の熱く描かれた杉元と対になるような、静かで美しいアシリパが表紙の2巻感想です。

○どんな話?

「不死身の男」こと杉元佐一は、ある事情で大金を欲していた。
脱獄した囚人たちの身体に彫られた刺青の地図を集めると、アイヌの埋蔵金へたどり着くことを知った杉元は、偶然出会ったアイヌの少女・アシリパと共に目的を果たそうとする。
埋蔵金を狙う陸軍第七師団の猛者が迫り、大自然が牙を剥くなか、杉元の戦いは続く―!!

主人公、ヒロインのキャラと設定が固められ目的がはっきりし、囚人のボス・土方歳三と陸軍のボス・鶴見中尉が登場したのが1巻のラストでした。
2巻では杉元と敵対勢力の戦いが描かれるだけでなく、敵勢力VS大自然の戦いがあり、アシリパの帰省があり、そしてお楽しみの食事シーンもありと、読み応えのある1冊になっています。
(帯が良い味を出していますが、脱獄王・白石が他の敵より格下すぎて北海道グルメより浮いていると思います。)

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杉元とアシリパのこの顔がセットで出てくると笑ってしまいます。
調理シーンもなかなかグロテスクですが、食事シーンは「ゴールデンカムイ」の癒しですね。味噌のくだりも好きです。

アシリパがアイヌの村へ帰省した一連のエピソードは楽しく読むことができたので、同じような展開で再登場して欲しいものです。
しかし、割と容赦ないので村が犠牲になる不安も生まれてしまったのでした。
あと、そういう展開になると現状全く思えないこの段階でアシリパさんの照れ顔が見られたのも眼福でした。
こちらも最終的にどうなるかわからないのですが、杉元にも梅ちゃんにも救いがあることを願います。


○軍人としての誇り

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2巻で印象的な戦いは、軍人VSヒグマです。
画像のシーンはヒグマに噛まれて内臓が飛び出た後ですが、「俺は帝国第七師団の軍人だ」と言って果敢に挑んでいきました。
ある意味では狂気じみています。
が、鶴見が語る「日露戦争で活躍をして生還をしたのに、還ってきたら放浪者だ。失ったもののほうが多くないか?」ということは軍人視点だと正論に思えます。
それを踏まえると、死を前にしてなお戦いを挑む軍人たちの姿は狂気でもあり、誇りでもあるのかな、と。
他人から正当に評価がされない以上、戦って生き抜いた強さを自分たちで誇るしかない、というような姿にも見えました。

軍人たちのボス・鶴見は2巻だけの描写を見るだけで充分に狂人ではあるんですが、杉元も囚人は殺してもいいスタンスで埋蔵金を探しているので、敵ではあるけど悪ではないという印象を受けました。
鶴見が正しいことを言うシーンでは、心なしか表情もまっすぐに見えます。
ただ狂っているだけのキャラクターではないのかな、という期待と不安が半分ずつですが、期待を少し多めに軍人たちにも気持ちを向けていきたいです。


囚人のボスが本当に土方歳三だとしたら、彼の想いも何かしら納得ができるような描写がされるのではないかなと期待をするくらいサブキャラクターにもしっかり血が通っている「ゴールデンカムイ」。
横文字は苦手なので「ヒンナ」と「オソマ」しか覚えられていませんが、アイヌの知識も身について勉強になります。
3巻は初夏とのことで待ち遠しいです。


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「ゴールデンカムイ」1巻 不死身の男、埋蔵金の謎に挑む






「人間を殺せば地獄行きだと?それなら俺は特等席だ」

2015年、話題の新作として既に注目されている「ゴールデンカムイ」1巻の感想です。

○どんな話?

日露戦争から生還した「不死身の杉元」こと杉元佐一。
ある事情から大金を必要としていた彼が偶然知った、アイヌの隠した埋蔵金があるという"噂"。
アイヌの少女・アシリパとの出会い、そして、敵となる死刑囚や軍人との出会いがその"噂"を現実のものに変えていく。
未だ見ぬ"死"に出会う前に、埋蔵金に辿り着くための新たな戦争が始まる―!!


1巻なので、主人公とヒロイン(?)のキャラ立てと世界設定の説明が基本になっています。
が、敵対勢力が2つあることが判明するだけでなくそれぞれのボスが出てきたり、自然界の敵として立ちはだかるヒグマとの死闘があったりと、主人公・杉元が「不死身」という異名を持っていながらも一筋縄ではいかない展開がこれからも待ち受けていることを予感させてくれます。



○命がけの戦いと…(ある意味)命がけの食事

北海道が舞台ということで、それだけで何となく親しみが湧きます。
が、時代が違うので当然、北海道でほのぼのと埋蔵金を探す話にはならないわけです。


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1話から内臓が飛び出すことからわかるように、けっこうハードな作風です。
絵の雰囲気からも少し柔らかい作風だと思い込んでいたので、そのギャップに驚きました。

動物との戦いと人間との戦いで使える武器が違うことや、バトルヒロイン・アシリパが人間を殺したくないというスタンスから加勢があまり望めないことなど、相手によって条件が違うので「杉元が不死身だから安心して見てられる」ということにはなりません。
杉元は囚人相手なら情報目当てで殺せないこともあるけれど、敵にとってはどうでもいいので殺しにくる、必殺の毒矢を人間相手には使えない、という設定の上手さに感心しました。

1巻のバトルは、人間は卑怯だけれど、それを上回るパワーがヒグマにあるので大自然恐るべし、という印象です。

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(ヒロインに)兎の脳みそを嫌々食べ(させられ)る杉元の図

食事をしている時だけは別の作品みたいな空気が生まれているのが面白いです。

この作品を手に取ったきっかけは、単行本を買う時にかなり参考にさせて頂いている方が単行本発売前に作品名を出して面白いと言っていたからでした。
その時に追加で事前調査をした時に、食事シーンに画像付きで触れている別の方がいて、その画像のインパクトが強かったので、先ほど言ったようにギャグ寄りの話だと思っていました。
実際はシリアス:ギャグ=9:1という感じでしょうか。

思っていたのと全然違うけど面白い、という不思議な出会い方をした作品ですが、
囚人のボスが言われている通りの人物なのか、杉元は最終的にどうなるのかなど、気になることが多すぎるので楽しみに追いかけていきたいです。

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