ダンジョン飯

2015年02月23日

「ダンジョン飯」1巻 迷宮を美味しく攻略しよう!

ダンジョン飯 1巻
九井 諒子
KADOKAWA / エンターブレイン
2015-01-15


「一時期あれほど恐ろしかった対象が こんなに脆く うまい魔物だったとは」

1月に発売したにも関わらず、今年の新作ナンバーワンとの呼び声が高い「ダンジョン飯」1巻の感想です。

○どんな話?

大迷宮・黄金城を攻略する冒険者ライオスとその仲間たちはレッドドラゴンと戦っていた。
強敵を前に「腹が減った」という欲求が顔を出し、ドラゴンの一撃がライオスを襲う。
妹・ファリンの捨て身によって全滅を免れダンジョンから脱出したライオス一行だったが、ドラゴンに喰われた彼女は還らず、金は底を尽いてしまう。
妹を助けに再度迷宮へ向かうライオスの秘策は、魔物を食べて自給自足する「ダンジョン飯」生活!
魔物を食べて十数年!ベテランのドワーフ・センシを加え、ライオス一行の「ダンジョン飯」を巡る冒険が始まる―!

表紙のイメージでは「のほほんとダンジョンを巡りながら、出会ったモンスターをおいしく調理する作品」でしたが、いきなり主人公が全滅してダンジョンを潜るための目標がすぐに立つという導入で、良い意味でイメージを覆されました。

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ダンジョンで飯を調達しようぜ!となる前の段階から心を掴まれました。
画像のシーンは第1話で、妹を助けられるか考えているところです。
人並み以上にはゲームが好きなので、この「HPが0になったら死ぬけど生き返す手段がある」という設定を分かりやすい形で見せてくれてワクワクしました。
また、この設定のおかげで「初めての冒険でダンジョン飯を求めるぜ!」といった導入ではなかったことも、作風と上手くマッチしているように思えました。
死んで覚えるうちに、冒険の醍醐味として「食」を覚えたパーティーというのは面白いです。

また、以前戦っていて簡単に倒せる魔物ならすぐ食材にできる一方で、後半では強敵に苦戦しながらも勝利する戦いもあり、冒険のバランスが取れています。
あとはダンジョンの罠を料理に活かしてみたりなど、ちゃんとダンジョン要素も盛り込みながら、独自の「飯」要素を面白おかしく描いているなあ、と。


○貴方は食べたい?ダンジョン飯

肝心の「ダンジョン飯」は、キノコの化け物の水炊き、マンドラゴラのオムレツ、鎧騎士のフルコース(!)など個性的な料理ばかりです。
ファンタジーの食材ばかりなので作りたくても作れないんですが、もし作れても「ダンジョン飯、食べたい!」と単純には思えず、意見が分かれそうなのが面白いところです。

作中の主人公パーティーも食べたい派の2人と、食べたくない派の2人に分かれています。
欲望のままに魔物を食事にに変える食べたい派の2人は見ていて楽しいですし、
食べたくない派の2人が抵抗する様子も同じく見ていて楽しいです。

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おいしいけど認めたくない

食べたくない派の女性エルフ・マルシルが、
食べたくないけど空腹で食べざるを得ない→食べてみたら美味しい!→新しい魔物(食材)に出会ったらやっぱり食べたくない→食べてみたらやっぱり(以下略)というの繰り返しているのを見ていると、
食べたくない派の読者の人も、食べたら意外と……と思ってしまうのかもしれません。
(私は好き嫌いなく何でも食べれるので、目の前に再現メニューがあったらたぶん食べます)

上記の画像のようにキャラクターの掛け合いも見ていて楽しいです。
マルシルはライオスに好意があってダンジョン再突入に同行する風に1話では見えたのですが、ダンジョン飯への欲望がむき出しになったライオスを変な目で見始めたのが面白いです。

ライオスは主人公なのに「食」になると頭のネジが外れるのが魅力的です。
それに巻き込まれる常識人の食べたくない派2人が可哀想でもあり、一歩引いた突き放す時のリアクションもいいですね。
このバランスが好きなので、どうか食べたくない派の2人には頑張って抵抗してほしいですし、最終的には「美味しい」と言って欲しいのでした。

現時点での大きな目標が妹の救出なのか、レッドドラゴンを美味しく食べることなのか既にわからなくなっていますが、ライオス一行にはぜひどちらも達成してほしいところです。
最終的にダンジョンのラスボスを食べるところまで見たくなった、先が楽しみな1巻でした。




「GJ部」…じゃなくて「グッドイーター」もダンジョンでご飯を食べる作品です。

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